- ✓バクテリオファージは大きく2つに分けられる
- ✓製品に用いられるのは「溶菌性ファージ」
地球上には10の30乗個以上のバクテリオファージが存在すると推定されており、その種類は細菌以上に多様性に富んでいます。
今回はそんなバクテリオファージの種類について少し紹介してみたいと思います。
バクテリオファージはそのライフサイクルによって大きく2つ(溶菌サイクルと溶原サイクル)に分けることができます。
溶菌性ファージ(ビルレントファージ)
溶菌サイクルでは、溶菌性ファージはまず細菌の中に遺伝子だけを注入します。注入された遺伝子は細菌の機能を利用して、新しいバクテリオファージの遺伝子を作ります。バクテリオファージの遺伝子からタンパク質が合成され、それを自らの構成成分に使います。最後にバクテリオファージは細菌を溶かして外に出てきます。
もう一つは、溶原サイクルにおける溶原性ファージというものです。
溶原性ファージはまず細菌の中に遺伝子を注入します。溶原性ファージの遺伝子は細菌の遺伝子の中に組み込まれます。そしてファージ由来の遺伝子は細菌の子孫にも受け継がれます。
しかし、紫外線や抗生物質といった外部からの刺激が加わると、溶原性ファージの遺伝子をもとに娘ファージが複製されます。そうなると、溶原性ファージは溶菌性ファージと同様に、最後には菌を溶かして外に出てきます。
製品で用いられているファージの種類
ロシアやアメリカで現在販売されている製品で用いられているバクテリオファージは前者の「溶菌性ファージ」というタイプです。なぜなら溶原性ファージの一部は、感染した細菌の遺伝子を取り込み、他の細菌に伝播する性質を持っているからです。もし毒素をコードする遺伝子が伝播されると非病原性の細菌が病原性細菌に変化する危険があります。
一方、溶菌性ファージの場合、溶原性ファージのように感染した細菌の遺伝子を取り込むことはありません。そのため、前者の「溶菌性ファージ」というタイプのみが製品原料として利用されています。
ただ、まだ実用化はされていませんが、溶原性ファージを利用した治療法についての研究もなされています。もしかすると近い将来に、これまで製品原料としては見向きもされなかった溶原性ファージが利用される日も来るかもしれません。