- ✓ファージの一般的な分類は?
- ✓「生物」の定義を覆す細菌やファージ
ファージの一般的な分類は?
バクテリオファージ(以下ファージ)は生物なのでしょうか?それとも無生物なのでしょうか?
ファージは、生物が共通して持つ特徴である細胞という構造を持っていません(※1)。
また、ファージは遺伝情報を伝える分子としてDNAあるいはRNAを持っていますが、細胞のように自ら分裂して増えることはできません。ファージは、それぞれ決まった細菌(宿主)の細胞に侵入し、宿主細胞の機能を利用しないと増えることができないのです。
さらにファージは栄養分を取り込んだり、不要になったものを排出したりするなどの生命活動を行いません。
このように生物が共通して持っている特徴の一部だけしか持っていないため、ファージは一般的には生物に分類されません。
「生物」の定義を覆す細菌やファージ
しかし近年、これまでの「生物」の定義を覆すような細菌やファージが知られるようになったことにより、細菌とファージの境界、そして生物と無生物の境界が大きく揺らぎ始めています。
例えば2006年にはキジラミという昆虫に寄生する細菌カルソネラ・ルディアイのゲノム解析結果が報告されました。それによると、カルソネラ・ルディアイには、生物と見なされるのに必要な機能の多くが備わっていないことが分かったのです。
カルソネラ・ルディアイは、DNAの複製、転写、翻訳に関与する遺伝子を持っていません。そのため、カルソネラ・ルディアイはこれらの機能をキジラミの細胞に依存しているのではないかとみられています。
一方で、これまでの常識を覆すようなファージも発見されています。
それは数千もの遺伝子をもつジャイアントファージです。ジャイアントファージは自前のt-RNA遺伝子や遺伝子の複製や転写に関わる酵素の遺伝子を持っています。
このような近年の研究結果を見ていると、細菌とファージの境界、そして生物と無生物の境界がますますグレーなものになってきているのではないかと思います。