バクテリオファージとは

バクテリオファージがあの形をしている理由

2019.09.07

この記事の要点は…
  • ✓バクテリオファージがあの特徴的な構造をしているのには深い理由がある
  • ✓バクテリオファージの形が人工物っぽい
  • ✓バクテリオファージの大きさと形の間の意外な関係
  • ✓バクテリオファージには何で胴体や足があるの?

バクテリオファージがあの特徴的な構造をしているのには深い理由がある

バクテリオファージは自然界が作り出したものなのに、まるで宇宙船のような人工的な形をしています。
実はバクテリオファージがあの特徴的な形をしているのには深い理由があります。今回はなぜバクテリオファージがあの形になったのかについて紹介してみたいと思います。

バクテリオファージの形が人工物っぽい

バクテリオファージの大きさは数十~数百ナノメートルです。1ナノメートルというのは100万分の1ミリのことなので、バクテリオファージは大変小さいということになります。
バクテリオファージはこのように大変小さいので、通常の光学顕微鏡では見ることができず、電子顕微鏡を使わないと観察することはできません。
電子顕微鏡で見てみると、バクテリオファージは少し縦長の正二十面体の頭、胴のようなテール、足のようなロングテールファイバーを持っていることが分かります。

バクテリオファージの大きさと形の間の意外な関係

バクテリオファージが正二十面体の頭を持っているのは偶然ではありません。実はバクテリオファージがとても小さいこととバクテリオファージの頭が二十面体であることには深い関係があるのです。

上の写真を見てわかるように、バクテリオファージはとても特徴的な形をしています。中でも不思議なのは正二十面体の頭を持っていることだと思います。 バクテリオファージが正二十面体の頭を持っているのは偶然ではありません。実はバクテリオファージがとても小さいこととバクテリオファージの頭が二十面体であることには深い関係があるのです。

バクテリオファージの大きさはとても小さいにもかかわらず、頭の中には自らを複製するために必要なゲノムがちゃんと入っています。バクテリオファージのゲノムの中には、バクテリオファージの殻を構成するタンパク質のシートを設計するために必要な情報も当然入っています。

こんな小さな頭にこのようなゲノムを全て入れるには相当工夫しなければなりません。

著名な生物学者であるワトソンとクリックは、ゲノムをなるべく小さくするために、同じ形のタンパク質のシートを幾つも生産する設計になっているのではないかと考えました。すなわち、もしバクテリオファージの殻を構成するタンパク質シートの形が全部同じだとしたら、1種類のタンパク質のシートの設計情報さえあればそれを繰り返し使って多くのシートを作ることができるので、用意する設計情報の量が少なくて済むのではないかと考えたのです。

同じ形の面を持つ立体(=正多面体)には正四面体、立方体(正六面体)、正八面体、正十二面体、正二十面体の5種類しかありません。さてこの中のどれがバクテリオファージの殻の形として最適なのでしょうか?

まず殻はある程度大きくなければゲノムを収納することができません。なので、表面をなるべく多くの合同な図形に分割して、そこに同じ形のタンパク質シートを敷き詰めることのできるような正多面体が最適ということになります。注意しなければならないのは、分割後の図形が接する面の数といった条件が同じになるように面を分割しないといけないということです。

正多面体の中で、分割した後の図形の数が最大となるのは正二十面体です。正二十面体の場合、2回軸、3回軸、5回軸(※詳しくはコラムを見てください)を持つので、20の面を3等分することで60の同じ形の図形に分割することができます。

そのため正二十面体こそがバクテリオファージのゲノムを収納するのに最適だということになるのです。

ファージには何で胴体や足があるの?

動物に感染するウイルスはテール(胴体のように見える部分)やロングテールファイバー(脚のように見える部分)がありません。 動物ウイルスはレセプターに結合すると、ウイルスごと細胞に取り込まれ感染が成立するので、テールやロングテールファイバーは必要ではないのです。

一方でファージは細菌に結合した後に強固な細胞膜を貫通し、ファージの遺伝子だけを細菌に注入する必要があります。
遺伝子注入の際はロングテールファイバーやスパイクタンパク質でしっかりと細菌をつかんで、力んで注入しなければなりません。
こうしてみると、ロングテールファイバーやスパイクタンパク質は遺伝子注入に最適の形状と機能を持っていると言うことができるでしょう。

コラム:回転対称とは?

nを2以上の整数とし、ある中心(2次元図形の場合)または軸(3次元図形の場合)の周りを (360 / n) °回転させると自らと重なる性質を、n回対称といいます。たとえば、n = 3 の場合、120°回転させると自らと重なるので、3回対称です。

正二十面体は、
辺の中点と辺の中点を結ぶ2回軸(15本)
面の重心と面の重心を結ぶ3回軸(10本)
頂点と頂点を結ぶ5回軸(6本) 
を持っています。


参考文献:B.V. Venkataram Prasad et al. Principles of Virus Structural Organization. Adv Exp Med Biol. 2012; 726: 17–47.

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