バクテリオファージとは

バクテリオファージとは

2019.09.06

実は私たちの健康と深くつながっている『バクテリオファージ』。
バクテリオファージに注目が集まりつつある今、ぜひ知っておきたいバクテリオファージに関する基礎知識をご紹介していきます。

この記事の内容
  • ✓バクテリオファージって何?
  • ✓バクテリオファージってどういう意味?何由来なの?
  • ✓ファージは細菌を退治する?
  • ✓バクテリオファージと菌バランス
  • ✓なぜファージセラピーが今注目されているの?
  • ✓ファージセラピーに使われるファージってどんなファージ?

バクテリオファージって何?

バクテリオファージ(以下、ファージ)は細菌(バクテリア)に感染するウイルスです。

ファージは核酸(DNAまたはRNA)とタンパク質の殻からできています。

ファージはバクテリアにしか感染しないので,私たち人間の細胞には感染しません。

バクテリオファージってどういう意味?何由来なの?

バクテリオファージとはずばり「バクテリア(bacteria)を食べるもの(ギリシャ語:phagos)」という意味です。

今から100年以上前、バクテリオファージの発見者の一人であるフェリクス・デレーユは、バクテリオファージがまるでバクテリア(細菌)を食べているかのようだと考えて、この名前を付けました。

ファージは細菌を退治する?

ファージは、脚についているセンサーを使って、ターゲットとする細菌の目印を探します。そして、ファージはその目印を見つけると細菌に感染します。

細菌に感染したファージは細菌の中で増えて、細菌を溶かしてしまいます。

ターゲットとする細菌がある程度少なくなると、ファージもそれに合わせて少なくなっていきます。

ファージは自分がターゲットとしない細菌には見向きもしません。例えば大腸菌をターゲット(宿主)とするファージは大腸菌を退治することができたとしても、アクネ菌には見向きもしません。

しかも大腸菌をターゲットとするファージがあらゆる大腸菌を退治できるというわけではありません。一概に大腸菌といっても実はとても個性豊かなので、1種類の大腸菌ファージだけでこの世の全ての大腸菌に対応できるようにするというのは不可能なのです。

ある程度の種類の大腸菌をカバーできるようにするには、複数の種類の大腸菌ファージを組み合わせる必要があります。 このように複数の種類のファージを組み合わせたもののことを、数種の洋酒やジュースなどを混ぜあわせたカクテルになぞらえて「ファージカクテル」と呼んでいます。

ファージカクテルを作成することにより、幅広い範囲の細菌に対応できるようになるだけではなく、耐性菌の出現を抑えることができるようになります。(詳しくは下記コラムをご覧ください)

バクテリオファージと菌バランス

バクテリオファージはターゲットとする菌を全滅させることはできません。
バクテリオファージは細菌の密度が低下すると細菌に感染しにくくなります。これは、ファージが細菌と巡り合う確率が低下するからです。

自然界では何らかの理由で突発的に数が増えた細菌があると、バクテリオファージが細菌に感染しやすくなります。
つまり、バクテリオファージは増えすぎた細菌を溶菌することで細菌のバランスを整える役目を担っているのです。 このようなことを考えると、バクテリオファージは菌のバランスをちょうど良い状態に整えてくれる自然界のモデレーターということができるでしょう。

細菌側も細菌側で常にバクテリオファージ対策を行っている訳ではありません。細菌にとってバクテリオファージ対策を講じることの負担はとても大きいので、バクテリオファージ対策はリスクがある状況でだけ行っているのです。

このようにバクテリオファージと細菌は30億年以上互いを全滅させることなく、適度なバランスを保ってきたのです。

なぜファージセラピーが今注目されているの?

現在世界各国で抗生物質の効かない薬剤耐性菌の拡大が深刻な問題となっています。そんな中でファージを利用した「ファージセラピー(ファージ療法)」は耐性菌との闘いにおける一つの突破口として注目されています。

ファージセラピーに使われるファージってどんなファージ?

ファージはそのライフサイクルによって大きく2つ(溶菌サイクルと溶原サイクル)に分けることができます。

 
溶菌性ファージ(ビルレントファージ)  

溶菌サイクルでは、溶菌性ファージはまず細菌の中に遺伝子だけを注入します。注入された遺伝子は細菌の機能を利用して、新しいバクテリオファージの遺伝子を作ります。バクテリオファージの遺伝子からタンパク質が合成され、それを自らの構成成分に使います。最後にバクテリオファージは細菌を溶かして外に出てきます。

 
溶原性ファージ(テンペレートファージ)  

溶原性ファージはまず細菌の中に遺伝子を注入します。溶原性ファージの遺伝子は細菌の遺伝子の中に組み込まれます。そしてファージ由来の遺伝子は細菌の子孫にも受け継がれます。 しかし、紫外線や抗生物質といった外部からの刺激が加わると、溶原性ファージの遺伝子をもとに娘ファージが複製されます。そうなると、溶原性ファージは溶菌性ファージと同様に、最後には菌を溶かして外に出てきます。

ロシアやアメリカで現在販売されている製品で用いられているバクテリオファージは前者の「溶菌性ファージ」というタイプです。なぜなら溶原性ファージの一部は、感染した細菌の遺伝子を取り込み、他の細菌に伝播する性質を持っているからです。もし毒素をコードする遺伝子が伝播されると非病原性の細菌が病原性細菌に変化する危険があります。

一方、溶菌性ファージの場合、溶原性ファージのように感染した細菌の遺伝子を取り込むことはありません。そのため、前者の「溶菌性ファージ」というタイプのみが製品原料として利用されています。

ただ、まだ実用化はされていませんが、溶原性ファージを利用した治療法についての研究もなされています。もしかすると近い将来に、これまで製品原料としては見向きもされなかった溶原性ファージが利用される日も来るかもしれません。

コラム

細菌とファージを長い時間一緒に培養するとファージが感染できないファージ耐性細菌が出現します。

ファージ耐性化の分子機構は様々ですが、多くの場合細菌の目印(ファージレセプター)が変異することで耐性化します。

ファージが細菌に感染する際、ファージは感染する細菌のレセプターに取り憑きます。レセプターに取り憑く器官をリガンドと呼び、ファージの足先に付いています。ファージ耐性菌はレセプターの発現を止めたり、構造を変化させたりすることでファージの結合を回避するのです。

例えば大腸菌O157:H7とファージ(PP01)を長時間培養すると、PP01ファージが感染できないファージ耐性大腸菌O157:H7が出現します。大腸菌O157:H7はPP01ファージのレセプター分子である外膜タンパク質C(OmpC)の遺伝子を欠損することで耐性化するのです。

PP01ファージが存在するときOmpC欠損大腸菌は野生株より優位です。しかしファージがいない環境ではOmpC欠損大腸菌は正常な大腸菌に比べて不利になります。なぜならOmpCの本来の役割である栄養分を培地から吸収する機能を欠損するからです。身を削って耐性化することを「コストを払う」と言います。細菌はコストを払ってファージ耐性化するのです。

ファージによってレセプターは異なります。異なるレセプターを用いる複数のファージ混合液(ファージカクテル)を用いると細菌は多くのコストを払わなければなりません。従ってカクテルに対する耐性化は難しく、成功したとしても多大なコストを払うことになるのでカクテル耐性細菌はひ弱な存在になります。

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