バクテリオファージの広がる活用方法

ジョージアのバクテリオファージ研究所

2021.05.31

この記事の要点は…
  • ✓バクテリオファージ研究のメッカ、エリアヴァ研究所
  • ✓バクテリオファージセラピーの実際
  • ✓エリアヴァ研究所が進める研究について

さまざまな細菌に対する特効薬といえる抗生物質の誕生は、20世紀の医療を変えました。しかし、近年、世界中で抗生物質の効かない「薬剤耐性菌」と呼ばれる細菌が増加しています。また、抗生物質の乱用も問題になっています。ここで最近、細菌を「食べる」自然ウイルス「バクテリオファージ」による治療が注目されています。

バクテリオファージ研究のメッカ、エリアヴァ研究所

バクテリオファージによる細菌感染症治療のメッカ的な存在が、ジョージアの首都トビリシにあるG.エリアヴァ記念バクテリオファージ・微生物学・ウイルス研究所です。略称エリアヴァ研究所としられるこの研究所の歴史は古く、1923年にジョージア出身の医師ゲオルギー・エリアヴァがフランス人のフェリックス・デレーユの協力を得て、世界でも稀なバクテリオファージの研究所を、トビリシに設立しました。 以降、エリアヴァ研究所はソ連におけるバクテリオファージ研究開発と製造の中心となりました。ジョージア独立後はジョージア国立の研究所として研究を続けています。

バクテリオファージセラピーの実際

エリアヴァ研究所は、研究部門である研究所と付属治療施設のエリアヴァ・ファージセラピー・センターからなり、エリアヴァ研究所所長によると現在、エリアヴァ研究所の研究者数は約60名。セラピー・センターで約20名の医師が在籍しています。 研究所所長のムジア・クタラーゼ博士は「バクテリオファージは安全でどのような副作用も起こしません」と言います。 1つ目の理由が、バクテリオファージは自然界にも存在しているからです。また、バクテリオファージは人間の体内にも数多く生育しています。 詳しくは下記の記事を見てください。

関連記事
バクテリオファージは実は人間の体内にいる?

バクテリオファージは実は人間の体内にいる?

また、研究、治療に使用されているバクテリオファージは、溶菌性ファージ(ビルトレントファージ)という種類の有益なバクテリオファージのみです。 詳細はこちらの記事を見てください。

関連記事

有益なファージと有害なファージの3つの違い!!

2つ目の理由が、バクテリオファージがターゲットにするのは特定の細菌(バクテリア)のみであり、さらに、増えすぎた細菌(バクテリア)のみに感染するからです。 このため、患者個人の症状や体質に応じてさまざまなバクテリオファージを組み合わせた「カクテル」を作ることで、有効な治療を行うことができます。そこで、大きな助けになるのが、エリアヴァ研究所が設立1923年から蓄積してきた世界最大規模180種のバクテリオファージコレクションです。これにより、より患者個人に合わせたバクテリオファージ「カクテル」が作成できます。

バクテリオファージカクテルについてはこちらの記事を参考に。

なぜ複数のファージを組み合わせる必要があるの?

感染症においてはしばしば複数種の細菌(バクテリア)が関与しています。そのため、正確な診断がバクテリオファージによる治療の鍵となります。正確な診断による、患者に合ったバクテリオファージを選択することができるのがエリアヴァ研究所・ファージセラピー・センターの強みです。 エリアヴァ研究所の噂を聞きつけ、欧米からも、難病治療のために多くの患者がエリアヴァ・ファージセラピー・センターを訪れています。

現在、エリアヴァ研究所では様々な分野の研究に力を入れています。例えば、さまざまな感染症、腸、皮膚や軟組織などにおける症状、腸、胃や食道などの消化器官と泌尿器官の疾患、婦人科感染症、細菌(バクテリア)性の慢性疾患におけるバクテリオファージの利用などです。また、EUと協力して子供の喘息患者の微生物バランス(ユーピオシス)におけるバクテリオファージの役割の研究もしています。

さらに、農業分野でのバクテリオファージ利用の研究も盛んに行われています。 近年、人工的にバクテリオファージの改造を行う研究も盛んに行われていますが、クタテラーゼ 研究所所長は「遺伝子操作によるバクテリオファージの研究は興味深いが、ある程度限界がある」と指摘。エリアヴァ研究所は自然のバクテリオファージをベースにした研究をメインに行っているそうです。

まとめ

旧ソ連では1923年からずっと研究が続けられてきたバクテリオファージによる治療。一時期は欧米諸国でも研究されていましたが抗生剤の開発によって下火になっていました。しかし、最近、抗耐性菌の増加で再び注目されています。まだまだ伸びしろがあると感じるバクテリオファージ、今後どのような研究がされてどのように活用されていくのか楽しみです。


ユーラシアビュー119号より転載

この記事を友達にシェアしよう!

この記事を友達にシェアしよう!ジョージアのバクテリオファージ研究所

関連記事